学年別 獣医学部6年間の過ごし方|進級・卒業・国家試験までの年間スケジュール

獣医学部のスケジュール

獣医学部は6年間の長い学びの過程を経て、最終的に獣医師国家試験に合格し、獣医師として社会に羽ばたく学部です。ここでは、1年生から6年生まで、学年ごとの授業内容、実習、課外活動、そして卒業後の進路まで、順を追って詳しくご紹介します。これから獣医学部を目指す方や、進学を検討中の高校生にとって、具体的なイメージをつかむ手助けになれば幸いです。

1年生:大学生活のスタートと基礎教養の習得

入学初日

獣医学部は学年あたりの学生数が30名前後と非常に少なく、教室もコンパクトな規模で行われます。入学初日、最初は「友達ができるだろうか」と不安に思う人も多いですが、動物への愛という共通点があるため、すぐに打ち解けることができます。入学説明会の最後には、学部の先生方が集合し記念撮影を行います。少人数制のため、学生よりも教員の方が多く、緊張感のある場面となることもあります。しかし、話してみると皆さん動物愛にあふれた温かい方ばかりです。

授業カリキュラム

1年前期は主に共通教育が中心で、他学部の学生と一緒に幅広い教養を学びます。内容は外国語、哲学、倫理学、経済学、体育など多岐にわたり、最初は「獣医師になるために動物の勉強ができない」と不満に思う学生もいますが、視野を広げる機会として非常に重要です。後期は基礎系科目(生物学、生化学、生理学など)に入り、獣医師として必要な基礎知識の土台を作ります。高校で学んだ知識の延長線上にありつつ、より専門的な内容に触れることで、今後の学びの準備となります。

バイト・サークル活動

1年生は学業だけでなく、新しいことに挑戦する学年です。バイトやサークルも十分可能で、動物関連のアルバイト(動物病院、実験室、野生動物観察など)や、骨格標本作成や動物ボランティアなど獣医学生ならではのサークル活動に参加できます。こうした経験は、人と動物の関わりを学ぶうえで貴重な機会となります。

同期の仲間

少人数制のため、履修科目はほぼ全員同じで、自然と親しい友人ができます。学年や出身地も多様で、年齢層も幅広く、社会人経験者が再入学していることもあります。同期の仲間は、学業や実習で困難に直面したときの大きな支えとなります。

2年生:獣医学基礎の本格的なスタート

本格的な座学

2年生では共通教育が終了し、いよいよ獣医学の基礎科目が本格的に始まります。解剖学や組織学など、動物の正常な体の構造を理解するための知識を集中的に学びます。覚える情報量が非常に多く、基礎の段階での理解が今後の臨床や応用学習に直結します。

ユニークな実習

解剖や組織学の実習が開始され、座学で学んだことを実際に体感する機会が増えます。組織学では顕微鏡で標本を観察しスケッチを行うことが求められます。顕微鏡酔いに悩む学生もいますが、慣れれば克服可能です。解剖学では骨学のスケッチやテストが行われ、骨の位置や形態を正確に理解する能力が試されます。

命と向き合う経験

解剖実習は、多くの動物の命の協力により成立しています。学生は動物の尊い命に向き合いながら学ぶことで、獣医師としての責任感と倫理観を養います。この経験は、動物を診療するうえでの基本姿勢にもつながります。

課外活動と健康管理

座学や実習で忙しくなる一方、バイトやサークル活動も継続可能です。運動や英語学習も重要で、獣医療の現場では体力が必要な場面が多く、また最新の情報を得るには英語文献の読解能力も不可欠です。

3年生:専門科目の学びと研究室選択

公衆衛生と寄生虫学

3年生になると専門科目の学びが本格化します。動物だけでなく、人間社会に関わる公衆衛生学も多く学びます。獣医師は動物の健康だけでなく、人の健康にも関与する役割を持つためです。寄生虫学では多種多様な寄生虫を学び、顕微鏡で虫卵や虫体を観察し、スケッチを行います。細かい特徴を覚える必要があり、根気が求められます。

難関科目「病理学」

病理学は、動物の病気の原因や症状を総合的に理解する分野で、座学も実習も難易度が高いです。病理解剖や病理組織観察を通じて、診断能力や実務能力を養います。2年生で基礎をしっかり身に着けておくことが重要です。

研究室選び

3年生の冬には研究室を選択します。内科学、外科学、薬理学、解剖学、生理学、病理学などから興味に合った分野を選び、4年生以降の卒業研究のテーマを決定します。ここでの選択は卒業論文や将来のキャリアに直結します。

4年生:臨床科目と実践経験の拡大

臨床科目の開始

4年生になると、授業は臨床科目中心に移行します。循環器、呼吸器、皮膚、腫瘍、消化器など、各科目ごとの病気の診断や治療法を学びます。動物病院で働きたい学生にとっては、実際の症例に近い学びが得られるため、モチベーションも高まります。

実習経験

産業動物実習では牛の出産に立ち会い、夜間の対応を含めた実践的経験を積みます。また、犬の麻酔実習や注射法、手術補助などを通じて臨床技術を身に着けます。

インターンシップとキャリア形成

4年生では夏季・冬季休暇を利用して、動物病院や公務、研究機関、動物園などでインターンシップを行うことが推奨されます。幅広い職種に触れることで、自分に適した進路や専門分野を見つけることができます。

5年生:臨床実習と応用獣医学の深化

臨床実習の本格化

5年生になると、大学附属病院や外部病院での臨床実習が中心になります。内科、外科、外来診療、手術補助など、より実践的な経験を通して診断・治療のスキルを磨きます。小動物だけでなく、牛、馬、家禽など様々な動物の診療に対応できるよう訓練します。

専修教育と研究

5年生では、卒業後の進路に応じた専修教育も始まります。臨床、研究、公務員、産業動物など、自分が進みたい分野に沿った専門的知識や技術を学びます。卒業論文のテーマ決定や研究計画も具体化していきます。

6年生:卒業論文と国家試験、就職準備

卒業論文

6年生では、自分の研究テーマに基づいた卒業論文を作成します。実験や調査を行い、データをまとめ論文として提出します。優秀な論文は国内外の学会や獣医学雑誌に発表されることもあります。

国家試験と就職

6年生の春から就職活動が始まり、多くの学生は秋までに就職先を決定します。3月には獣医師国家試験があり、合格後に初めて獣医師として認められます。国家試験は6年間の学びの総まとめであり、受験準備は卒業論文や臨床経験と並行して行われます。

社会人としてのスタート

獣医師として勤務を開始すると、大学で学んだ知識を実務に応用する能力が求められます。受験時代に培った問題解決能力や考え方は、日々の診療や治療方針の決定にも役立ちます。

獣医学部6年間 月別スケジュール

1年生(教養・基礎獣医学の学年)

授業・学習内容 実習・演習 課外活動・バイト 備考
4月 入学式・オリエンテーション、学科ガイダンス 基礎化学・生物実験入門 サークル勧誘、学部交流イベント 大学生活スタート。友達作りやキャンパス環境に慣れる時期
5月 英語・数学・物理・化学 ラボ入門(実験器具の使い方) 動物関連ボランティア参加 基礎力養成。実験の基本操作習得
6月 物理・化学演習、基礎生物学 実験レポート作成 サークル活動、学部イベント 中間試験対策開始
7月 中間試験 ラボレポート提出 アルバイト開始可 夏休み前の総仕上げ
8月 夏季休暇(約3〜4週間) 自宅学習、自由研究 サークル合宿・ボランティア活動 研究施設見学も推奨
9月 共通教育後期(哲学・経済・倫理学) 基礎生物学実験 学生交流イベント 大学生活に慣れてくる時期
10月 教養科目・基礎獣医学入門 顕微鏡実習 学園祭準備、サークル活動 後期授業が本格化
11月 基礎獣医学科目(生物・生化学) 解剖基礎(模型・標本) アルバイト 実習レポート提出締切あり
12月 後期中間試験 実験評価 サークル・課外活動 冬休み前の総復習
1月 冬季休暇(約3週間) 自宅学習、実習まとめ サークル新年会、学習会 春学期準備
2月 後期期末試験 ラボレポート提出 アルバイト 学年末評価
3月 学年末休暇 総復習・自由研究 サークル引継ぎ 新学年準備

2年生(基礎獣医学の重要学年)

授業・学習内容 実習・演習 課外活動・バイト 備考
4月 解剖学・組織学入門 骨格模型観察 サークル活動 1年生基礎知識を応用
5月 生理学・基礎栄養学 顕微鏡スケッチ演習 動物ボランティア 顕微鏡酔い注意
6月 微生物学・遺伝学 解剖実習(小動物骨格・臓器) アルバイト可 骨学テストに備える
7月 中間試験 組織学レポート提出 サークル発表 夏休み前の重要試験期
8月 夏季休暇 自宅学習・復習 サマーインターン(病院・研究所) 応用力を鍛える
9月 病理学入門 顕微鏡標本観察・スケッチ サークル活動 後期授業開始
10月 公衆衛生学・寄生虫学 虫卵観察・スケッチ 学園祭準備 体調管理が重要
11月 組織学応用・解剖学応用 骨学テスト・再試 アルバイト 実習評価が厳しい
12月 後期中間試験 実習まとめ サークル活動 冬休み前の総復習
1月 冬季休暇 自宅学習・復習 インターン準備 2年生最後の追い込み
2月 後期期末試験 実習評価 アルバイト 3年生に向け準備
3月 学年末休暇 総復習・自由研究 サークル活動 研究室見学開始

3年生(専門獣医学のスタート)

授業・学習内容 実習・演習 課外活動・バイト 備考
4月 内科学・外科学・薬理学基礎 小動物診療補助 サークル活動 専門科目が本格化
5月 公衆衛生学・感染症学 病理標本観察 アルバイト 人獣共通感染症注意
6月 寄生虫学・微生物学 虫卵観察・スケッチ サークル発表 実習負荷が増す
7月 中間試験 実習評価 学会準備 後期に向け復習
8月 夏季休暇 自宅学習 インターン体験 応用力を鍛える
9月 病理学・公衆衛生学 病理組織観察 サークル活動 実習負荷が大きくなる
10月 内科学応用・診断学 病理実習 アルバイト 後期授業開始
11月 選択科目(魚病学・家禽疾病学など) 小動物症例観察 研究室見学 興味分野を探す
12月 後期中間試験 実習評価 学会参加 冬季休暇前の総復習
1月 冬季休暇 自宅学習・復習 サークル活動 研究室配属準備
2月 後期期末試験 実習評価 アルバイト 3年生終了
3月 学年末休暇 総復習・自由研究 サークル活動 新学年の研究室見学開始

4年生(臨床科目・応用獣医学の学年)

授業・学習内容 実習・演習 課外活動・バイト 備考
4月 循環器・呼吸器・皮膚病学 小動物病院実習 サークル活動 臨床実習が本格化
5月 消化器学・腫瘍学 手術補助・麻酔実習 アルバイト 留置針の練習開始
6月 麻酔学・手術学 麻酔管理・注射法 インターン準備 体力勝負の時期
7月 中間試験 実習評価 サークル活動 夏季休暇前の最終確認
8月 夏季休暇 自宅学習・復習 インターン参加 外部研修のチャンス
9月 臨床科目応用 産業動物実習(牛・馬) サークル活動 出産立会いなど貴重経験
10月 選択実習(動物園・水族館など) 手術・診断演習 アルバイト 後期授業開始
11月 臨床総合復習 症例検討 インターン継続 成長が実感できる時期
12月 後期中間試験 実習評価 サークル活動 冬季休暇前の総まとめ
1月 冬季休暇 自宅学習・復習 研究室活動 国家試験に向け準備開始
2月 後期期末試験 実習評価 アルバイト 研究発表準備
3月 学年末休暇 総復習 サークル活動 5年生に向け準備

5年生(臨床実習・応用臨床の学年)

授業・学習内容 実習・演習 課外活動・バイト 備考
4月 臨床総合・内科・外科応用 小動物臨床実習 サークル活動 5年生から本格的に病院実習が始まる
5月 感染症学応用・公衆衛生学 血液検査・画像診断 アルバイト 患者(動物)対応の基礎力を養う
6月 麻酔学応用・手術学応用 手術補助・麻酔管理 インターン 手術手技の習熟開始
7月 中間試験 実習評価 サークル活動 夏季休暇前のまとめ
8月 夏季休暇 自宅学習・復習 インターン体験 外部施設での実務経験が貴重
9月 産業動物学応用 牛・馬・豚の臨床実習 サークル活動 牧場や畜産現場での実践経験
10月 選択臨床科目(動物園・水族館・希少動物) 手術・診断演習 アルバイト 後期授業開始
11月 臨床総合復習・症例検討 実習症例報告 研究室見学 臨床能力の確認時期
12月 後期中間試験 実習評価 サークル活動 冬季休暇前の総復習
1月 冬季休暇 自宅学習・復習 インターン 国家試験の準備開始
2月 後期期末試験 実習評価・症例報告 アルバイト 6年生に向けて臨床力向上
3月 学年末休暇 総復習・自由研究 サークル活動 新学年準備、国家試験模試開始

6年生(臨床総合・国家試験対策の学年)

授業・学習内容 実習・演習 課外活動・バイト 備考
4月 臨床総合・内科・外科最終確認 小動物・産業動物臨床実習 サークル活動 6年間で学んだ知識を総合的に整理
5月 公衆衛生・感染症・麻酔最終確認 病院実習・症例検討 アルバイト 国家試験対策と実務力の両立
6月 国家試験対策集中講義 実習症例報告 インターン 模試・過去問演習中心
7月 模試・総復習 実習評価 サークル活動 夏季休暇前に最終確認
8月 夏季休暇 自宅学習・復習 国家試験模試 国家試験本番に向けた総仕上げ
9月 臨床総合復習 病院実習・症例検討 アルバイト 産業動物・小動物全般の確認
10月 選択臨床科目・応用臨床 手術・診断実習 サークル活動 実務力の最終チェック
11月 国家試験模試・総復習 実習症例報告 インターン 国家試験1〜2か月前のピーク期
12月 国家試験直前対策 実習評価 サークル活動 総復習・体調管理重視
1月 国家試験本番 実習・症例確認 卒業試験と国家試験
2月 卒業前総復習・研究整理 最終実習報告 アルバイト 卒業準備、就職活動最終調整
3月 卒業式 総復習・自由研究整理 新生活準備、臨床現場・大学院進学へ

 

まとめ

獣医学部6年間は、基礎学習から応用、臨床、研究、卒業論文、国家試験、就職準備まで、段階的に成長していくプログラムです。学年ごとに課題や学びの焦点が変化し、同期や教員、動物たちとの関わりを通して専門知識と実践力を身に着けていきます。獣医師を目指す学生にとって、各学年での経験は将来のキャリアに直結する重要な要素となります。

 

 
監修者プロフィール

Meg講師:平松 育子 先生

平松育子先生は、山口大学農学部獣医学科(現 連合獣医学部)を卒業された獣医師です。

卒業後は山口県内の複数の動物病院で代診として経験を積まれました。その後、山口市でご自身の動物病院を開業され、現在は大手動物クリニックの院長を務めていらっしゃいます。

授業においては、その豊富な臨床経験に基づいた、わかりやすく丁寧な解説が受講生から好評を得ています。