第76回獣医師国家試験|2025年問題解説まとめ

 

第76回獣医師国家試験 問題解答

第76回 獣医師国家試験で出題された問題のうち、よく出る問題や視野を広く持つことで回答できる問題、話題になったことを踏まえた問題を紹介します。

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必須問題 問32 日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)の中間宿主はどれか。

1.カワニナ

2.ミヤイリガイ

3.マメタニシ

4.ヒラマキミズマイマイ

5.ケンミジンコ

 

【正解】 2.ミヤイリガイ

以下は中間宿主・終宿主の一覧ですが、ほんの一部です。

参考にしてください。

 

第1中間宿主 第2中間宿主 終宿主
日本住血吸虫 ミヤイリガイ なし イヌ・ヒト
ウェステルマン肺吸虫 カワニナ モズクガニ イヌ・ヒト
横川吸虫 カワニナ アユ イヌ・ヒト
肝吸虫 マメタニシ コイ イヌ・ヒト
双口吸虫 ヒラマキミズマイマイ ヒラマキガイ なし ウシ・ヒツジ・ブタ・ウマ・シカ
日本海裂頭条虫 ケンミジンコ サケ イヌ・ヒト
マンソン裂頭条虫 ケンミジンコ カエル・ヘビ イヌ・ヒト
有棘顎口虫 ケンミジンコ ライギョ イヌ・ネコ
肝蛭 ヒメモノアラガイ なし ウシ・ヒト
広東住血線虫 アフリカマイマイ なし ネズミ
多包条虫※ ノネズミ なし キツネ・イヌ

※人や豚が偶発的に中間宿主になることはあるが、終宿主にはならない

A問題 問55 血管内吸血型の節足動物はどれか。

a サシバエ

b ブユ

c アブ

d シラミ

e ノミ

 

1.a, b   2.a, e   3.b, c   4.c, d   5.d, e

 

【正解】 5.

節足動物は、昆虫・クモ・甲殻類などのように、体が多くの節で構成され、関節のある足を持つ動物を指します。

「鋏角類(クモ・カブトガニなど)」「六脚類(昆虫)」「多足類(ムカデなど)」「甲殻類(エビ・カニ・ミジンコ・フジツボなど)」「軟甲類(シャコなど)」が含まれます。

吸血の形式には2種類あり、次の表を参考にしてください。

 

血管内吸血型 血管外吸血型
吸血様式 口器を直接血管に挿入する 皮下の血管を破綻させ真皮に血液を溜める
蚊・ヌカカ・サシチョウバエ・シラミ・ノミ マダニ・サシバエ・ブユ・アブ

口器の形状によって刺し方が異なる点に気づくことができれば、対策を立てておらず知らなくても回答できたのではないでしょうか?

 

細くて長いのか、ずんぐりと太く短いのかなどといった口器の形に着目してみてください。

節足動物とはどのような種類があるかについても確認しておきましょう。

B問題 問77 魚類の寄生虫病と特徴的な病変の組合せとして適当なのはどれか。

選択肢 疾患 病変
1 コイのダクチロギルス症 体側筋にシスト形成
2 カンパチのパラデオンタシリックス症 虫卵による鰓弁の血管の閉塞
3 ブリのベネデニア症 腹部の膨満
4 マダイのロンギコラム症 鰓の貧血
5 トラフグのカリグス症 鰓弁の棍棒化

 

【正解】 2.
1.コイのダクチロギルス症
ダクチロギルスと呼ばれる寄生虫が原因で、主に鰓に寄生します。25度以上の高水温期に流行します。
2.カンパチのパラデオンタシリックス症
主に住血吸虫の寄生によるもので、魚の心臓から鰓にかけての動脈内、鰓弁の動脈内などに産卵します。身体の赤色・黒色の変色、鰓の異常などが確認される場合があります。
3.ブリのベネデニア症
ベネデニア・セリオレ(ハダムシ)が体表に寄生し、皮膚に炎症やスレなどを起こします。魚の体表に強固に付着し体長10mmほどまで成長することもあります。養殖ブリに大きな被害をもたらします。
4.マダイのロンギコラム症
ロンギコラム(クビナガ鉤頭虫)がまだ胃の直腸に寄生する病気。寄生部位にはびらん、出血が見られ、粘膜の壊死や肉芽腫が起こります。大量寄生すると脱腸・腹部膨満などの症状がみられ、斃死することもあります。
5.トラフグのカリグス症
カリグスという寄生虫がトラフグの体表に寄生することで起こる病気です。カリグスは魚の血液や粘液、上皮を食べることで皮膚のびらんや鱗の欠損を引き起こします。

※鰓弁の棍棒化:鰓弁が腫脹し棍棒のように太くなる状態ですが、細菌性鰓病(Flavobacterium branchiophilum)、ダクチロイデス感染、アユの異形細胞性鰓病などで起こりやすい

課題6 次の文を読み、問11、問12に答えよ。

馬、サラブレッド種、雌、歳齢。レース中盤で急激に失速し、聴診で不整脈を確認した。〔図6〕はレース翌日の安静時の心電図(AB誘導)である。別冊D図6

 

問11 この不整脈はどれか。

1.心房細動

2.心室細動

3.心室頻拍

4.房室ブロック

5.洞房ブロック

 

問12 この不整脈の治療薬はどれか。

a アトロピン

b ドブタミン

c ニトログリセリン

d フレカイニド

e キニジン

 

1.a, b   2.a, e   3.b, c   4.c, d   5.d, e

 

【正解】

問11 1.

問12 5.

 

問11の解説

D問題は著作権の都合上、画像の掲載はできませんが、心電図を見て答える問題でした。動物病院で犬や猫の心電図をとる際は2誘導でとることが多く、Ⅰ誘導・Ⅱ誘導・Ⅲ誘導で確認します。馬のB誘導は左肩部と左心尖部に電極を置く方法です。この方法は特に馬の不整脈診断や心臓の評価に用いられます。

問題として出題された心電図では、

  • P波が消失している
  • 基線が不規則で細かく揺れている(f波)
  • RR間隔が不整

といった心房細動を表す特徴的な心電図でした。そのため、AB誘導が不明であったとしても答えは導き出せました。

 

問12の解説

循環器系の薬は救急薬として用いられるものも多く、使用する場面を踏まえて理解しておく必要があります。以下一例として紹介します。

アトロピン 徐脈時
ドブタミン 急性循環不全時
ニトログリセリン 急性心不全時・狭心発作時・血管拡張目的
フレカイニド 心房細動、心房粗動、心室性頻拍などの頻脈性不整脈
キニジン 期外収縮、発作性頻拍、心房細動
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