獣医師国家試験合格後の進路:小動物獣医師と産業動物獣医師【前編】
前回は獣医師国家試験の概要についてお話ししました。今回から獣医師の仕事を全2回にわたり紹介します。今回は「小動物獣医師」「産業動物獣医師」についてです。
獣医師の進路は実に様々
獣医師と言われると白衣を着て治療をしてというイメージがあると思いますが、様々な進路があります。
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小動物獣医師
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産業動物獣医師
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公務員
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製薬会社などの企業
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研究者
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その他
大まかにはこのような進路にわけることができます。
今回は小動物獣医師と産業動物獣医師についてお話しします。
小動物獣医師とは
一番イメージしやすい獣医師の職業が小動物獣医師だと思います。
診療対象動物は、「犬」「猫」「エキゾチックアニマル」です。エキゾチックアニマルにはウサギ・ハムスター・鳥・爬虫類・両生類・魚類・昆虫が含まれます。診療科目も予防・内科・外科・眼科など人の総合病院で行われる診療科目のほとんどを行います。
このように聞くと「全部できるのか?」とひるんでしまうと思います。
診療対象動物全てを診察するのではなく「犬・猫だけ」というように限定している病院もありますし、エキゾチックの中のこの種類だけというように限定している病院もあります。
診療科目は全般的に診察するが、得意な分野は外科というように得意分野のあるオールラウンドプレーヤーのような獣医師もいます。最近では専門病院という形態をとる動物病院もあり、「二次診療(高度医療)」「皮膚科専門」「整形外科専門」など専門化している病院もあります。
大学卒業後は数年勤務医として様々な勉強をしますが、その後は「個人開業」「勤務医」「企業形態をとる病院の院長」などに分かれます。
個人開業の場合は、開業する都道府県にも寄りますが初期投資がかなり必要になりリスクはありますが自分のやりたいことを追求できます。
勤務医としてキャリアを積み長く務めることもよいと思いますし、企業形態をとる動物病院の院長として活躍する道もあります。
いずれの勤務先を選んでも大切なのは、患者さんのために最大限の努力をする事だと思います。嬉しい結果ばかりではなく、悲しい結果もありますし、治療の成果が表れないこともあります。そのような時に、言い訳をしたり、諦めることなく、どれだけ患者さんのことを考えることができるかが大切だと思います。
産業動物獣医師とは
産業動物獣医師は主に畜産の分野に従事することになります。「牛」「馬」「豚」「鶏」などが対象になります。診療対象が家畜なので小動物獣医師とは治療内容が異なることが多いです。
まず、対象動物が大きいケースがあり、例えば牛ならばオスで1トン前後、メスで0.8トン前後なので犬や猫のように抱えて移動は不可能で、診察や治療も難しくなります。また、動物の命を助けることだけが仕事ではなく、農家の経営を守ることや、食の生産を支えることにもつながっています。
家畜はペットとは違いますので伝染病が流行してしまった場合は、病気を治すことはせず処分になってしまうことがあります。
少し前になりますが、口蹄疫が流行ったことがありました。移動制限・出荷制限が行われ農家にとって大打撃があっただけでなく、元気な牛も含めて殺処分になりました。感染源になる可能性があると判断された場合は、元気であっても感染を広げないために同じ牛舎内の牛は全頭処分になることがあります。
口蹄疫ついて知りたい方へ
※農林水産省参照
他にも、元気なのになぜ?と、納得しにくいことも多々ある畜産の世界ですが、病気の家畜の治療をすることも、伝染病を水際でせき止めるためにつらい決断を下し被害を最小限に抑えるようにすることも、産業動物獣医師の大切な仕事です。
今回は、小動物獣医師と産業動物獣医師の仕事についてお話ししました。大学では小動物の勉強だけでなく、産業動物の勉強もします。実習も各分野行いますので、自分で体験・経験し進路を決めてください。
次回は・公務員・製薬会社などの企業・研究者・その他の分野で働く獣医師についてお話しします。