獣医師免許でできること一覧|資格取得後のキャリアパス完全解説

獣医師免許とは?基本情報と法的位置づけ

獣医師免許証を発行している様子

獣医師免許の定義

獣医師免許は、農林水産大臣が交付する国家資格です。

獣医師法に基づき、動物の診療および保健衛生指導を行う権限を与えられます。

6年制の獣医学部を卒業し、国家試験に合格することで取得できます。

獣医師にしかできない独占業務

獣医師のみが行える業務は法律で明確に定められています。

主な独占業務は以下の3つです。

  1. 動物の診療行為:診察・治療・手術の実施
  2. 処方箋の交付:動物用医薬品の処方
  3. 診断書の作成:健康証明書・予防接種証明書の発行

獣医師免許でできること【分野別完全リスト】

獣医師免許でできることリスト

1. 小動物臨床分野

動物病院での診療業務

  • 犬・猫・エキゾチックアニマルの診察と治療
  • 外科手術の執刀と麻酔管理
  • 予防医療(ワクチン接種・健康診断)の実施
  • 救急医療と集中治療管理

開業権の行使

獣医師免許があれば動物病院を開業できます。

開業に必要な届出は都道府県知事への開設届のみです。

人間の医師と異なり、研修義務はありません。

2. 産業動物臨床分野

家畜の診療と管理

  • 牛・豚・鶏などの診療と健康管理
  • 農場HACCP認証の指導と審査
  • 繁殖管理の実施(人工授精には原則として家畜人工授精師免許が別途必要。ただし診療の一環として行う場合は不要)
  • 群管理と疾病予防プログラムの策定

農業共済組合(NOSAI)での勤務

農業共済組合の獣医師として、農家の経営安定を支援します。

往診中心の診療で、地域農業を守る重要な役割を担います。

3. 公衆衛生分野

食品衛生監視員

  • と畜場での食肉検査
  • 食品製造施設の衛生指導
  • HACCP導入支援と監査
  • 食中毒発生時の原因究明

狂犬病予防員

市町村職員として、狂犬病予防法に基づく業務を行います。

年1回の狂犬病予防接種の実施状況を管理します。

4. 公務員獣医師

国家公務員として

地方公務員として

  • 保健所:食品衛生監視、動物愛護管理
  • 家畜保健衛生所:家畜伝染病の予防と防疫
  • 動物愛護センター:収容動物の管理と譲渡推進

5. 研究・開発分野

製薬会社での研究開発

  • 動物用医薬品の開発と臨床試験
  • ワクチン開発と効果検証
  • 実験動物の健康管理と倫理審査

大学・研究機関での活動

  • 基礎研究から臨床研究まで幅広く従事
  • 次世代の獣医師教育と指導
  • 学会発表と論文執筆による知見の共有

6. One Health関連分野

人獣共通感染症対策

  • 新興感染症の監視と対策立案
  • 国際機関(WHOWOAH)での活動
  • パンデミック対策への参画

動物介在活動

  • アニマルセラピーの実施と効果検証
  • 介助犬・聴導犬の健康管理
  • 学校飼育動物の指導

7. その他の特殊分野

動物園・水族館

  • 展示動物の健康管理と繁殖計画
  • 希少種保護プログラムの実施
  • 環境エンリッチメントの設計

競走馬・競技動物

  • JRA(日本中央競馬会)での競走馬診療
  • 競技前後の健康チェック
  • ドーピング検査の実施

キャリアパス別の具体的な進路

獣医師のキャリアパス

新卒から3年目まで

小動物臨床を選んだ場合

1年目:基本的な診療技術の習得

2年目:手術助手として経験を積む

3年目:指導医サポート下で症例担当、一部は主治医経験あり

公務員を選んだ場合

1年目:基礎研修と現場実習

2年目:担当業務の独り立ち

3年目:業務に慣れ部分的に独り立ち、専門分野は習熟中

5年目以降のキャリア展開

分野 5年目の姿 10年目の姿 必要な追加資格
小動物臨床 専門診療開始 開業or専門医 認定医・専門医資格
産業動物 地域の中核獣医師 指導的立場 家畜人工授精師
公衆衛生 係長級 課長級 食品衛生管理者
研究開発 プロジェクトリーダー 部門責任者 博士号

獣医師免許を活かした副業・兼業

獣医師ができる副業

可能な副業一覧

  • 獣医師国家試験対策の講師
  • 専門書の執筆と監修
  • ペット関連メディアでの記事執筆
  • オンライン相談サービスの提供
  • セミナー講師としての活動

兼業時の注意点

公務員獣医師は兼業制限があります。

国家公務員法・地方公務員法により、所属長の許可なく兼業はできません。

民間勤務の場合も、勤務先の就業規則を必ず確認してください。

獣医師法に違反しない範囲での活動が必要です。

よくある質問(Q&A)

獣医師免許に関するよくある質問と回答

獣医師免許に更新は必要ですか?
更新は不要です。
一度取得すれば生涯有効な資格です。
ただし、2年ごとに就業状況の届出義務があります。
獣医師免許があれば人間の治療もできますか?
できません。
獣医師法により、診療対象は動物に限定されています。
人体への医療行為は医師法違反となります。
海外で獣医師として働けますか?
国により異なりますが、追加の試験や手続きが必要です。
アメリカ(NAVLE)、カナダ、イギリス(RCVS)などは各国の試験に合格が必要です。
一部の国では条件付きで相互認証がある場合もあります。
いずれも追加の手続きや試験が必須となるのが一般的です。
獣医師免許取得後、すぐに開業できますか?
法的には可能です。
臨床研修の義務はありません。
ただし、実務経験なしでの開業はリスクが高いです。
獣医師の定年はありますか?
免許に定年はありません。
体力と意欲があれば生涯現役で働けます。
実際に70代、80代で診療を続ける獣医師もいます。

獣医師免許取得を目指す方へ

獣医師国家試験の現状

  • 合格率:約80%(新卒者)、約70%(全体)
  • 試験実施:年1回(2月)
  • 必要な学習時間:1,000時間以上

効率的な試験対策なら予備校の活用を

独学での合格も可能ですが、効率を重視するなら予備校がおすすめです。

最新の出題傾向を把握した講師陣が合格への最短ルートを示します。

特に既卒者や仕事をしながらの受験生には、時間を有効活用できる予備校での学習が効果的です。

 

Megの国試対策コース 詳細はこちら

まとめ:獣医師免許は可能性を広げる万能資格

獣医師免許は動物の命を守るだけでなく、公衆衛生、食の安全、研究開発など幅広い分野で活躍できる資格です。

キャリアの選択肢は多岐にわたり、ライフステージに応じた働き方の変更も可能です。

獣医師不足が社会問題となっている今、獣医師免許取得者の活躍の場はさらに広がっています。

最新の法改正や制度変更については、農林水産省の公式サイトでご確認ください。