獣医学部1〜2年生の勉強法|基礎科目から”臨床思考の骨格”を築く学習戦略

獣医学部の基礎科目を学ぶイメージ

はじめに:獣医学部の「基礎期」は、将来の臨床力を決める

獣医学部に入学したばかりの1〜2年生にとって、授業内容は想像していた「動物の治療」や「臨床現場」とは少し違って感じられるかもしれません。

「動物を診るために入ったのに、なぜ化学式や生理学ばかり?」「動物について学ぶ時間があまりにも少ない」──多くの学生がそう感じます。しかし実際には、この教養の時期の基礎学習期こそが獣医師としての”思考の骨格”をつくる重要なステージです。

基礎医学・理系科目の理解が浅いまま進級してしまうと、3年次以降の病理学や薬理学などの専門科目、そして最終的な国家試験でも苦戦することになります。

本記事では、獣医学部1〜2年生が「ただ暗記するだけの勉強」から「知識を使いこなす学び」へシフトするための具体的な方法を、ステップ形式で紹介します。

──暗記から「使える知識」へ。6年間を支える学習転換法とは?

STEP 1 獣医学部1〜2年生で学ぶ科目とその目的を理解する

1〜2年次は「基礎期」と呼ばれ、専門知識よりも動物の体の仕組みや生命現象を支える原理を学びます。まずは、学ぶ内容が将来どのようにつながるのかを意識しながら取り組みましょう。

1. 生物学・化学・物理学:すべての基礎となる科目

これらの科目は、一見獣医学とは直接関係なさそうに見えますが、実は臨床科目の根幹を成しています。

  • 生物学: 細胞構造、遺伝、免疫など生命現象の理解
  • 化学: 代謝反応、薬物作用、酸塩基平衡の基礎
  • 物理学: 血圧、呼吸、筋収縮など体内の力学的現象の解明

例えば「薬理学」は、化学は薬の分子構造を設計・合成し、薬理学はその薬が体内でどのように作用するのかを解明・研究します。このため、薬理学は化学(特に有機化学)を基礎としており、薬理学をしっかり理解するためには化学と生物学の両方の知識が不可欠です。

学習ポイント:

  1. 「この知識は何の科目で再登場するか」を意識して学ぶ。
  2. 教科書を読む際、章末の「臨床応用」欄にも目を通す。
  3. 用語を丸暗記せず、自分の言葉で説明できるようにする。

2. 解剖学・生理学:「形態」と「機能」をセットで捉える最初の専門科目

1年後半〜2年次にかけて本格的に始まるのが、解剖学と生理学です。「形態(解剖学)」と「機能(生理学)」をセットで理解することで、臨床の基礎が作られます。

学習法のコツ:

  • スケッチ学習: 自分でイラストを描くことで立体的理解が深まる。
  • 比較解剖: 犬、猫、牛など複数動物の違いを意識する。
  • 3DアプリやVR教材を併用して視覚的に記憶する。

また、生理学では「なぜ体がそのように働くのか」という問いを持ち、単なる現象の暗記ではなくメカニズムの理解に重点を置きましょう。

STEP 2 ”覚える”から”使える”へ:理解型学習への転換法

基礎科目を「試験のために覚える」だけでは、1日後に74%は忘れてしまうといわれています。ここでは、知識を長期的に定着させ、臨床で活かせる“理解型学習”に変える方法を紹介します。

1. 関連づけノート法:分野横断で知識を整理する

科目ごとにノートを分けるのではなく、「テーマ別ノート」を作る方法が効果的です。

例:心臓をテーマにした場合

  • 解剖学 → 心臓の構造
  • 生理学 → 血流と拍動メカニズム
  • 化学 → ATP消費と酸素代謝
  • 病理学 → 心筋障害や血管病変

こうして「1つの現象を多角的に捉える」練習を積むと、記憶が長く残り、応用力も高まります。

2. 自問自答による”説明力”トレーニング

理解しているつもりでも、他者に説明できない場合はまだ不十分です。授業の復習時に、「なぜ?」「どうして?」という問いを自分に投げかけましょう。

実践例:

  • 「なぜ筋肉は収縮するのか、その際の電解質の役割は?」
  • 「なぜ神経伝達にはカルシウムが必要なのか、そのプロセスは?」

答えを自分の言葉で説明できるまで繰り返すことで、論理的思考力が育ちます。これが後の国家試験で問われる「思考力型問題」への最大の対策にもなります。

3. グループディスカッションと”教え合い学習”

1〜2年生のうちから、仲間と一緒に問題演習や要点整理を行うことは非常に効果的です。教える側・教えられる側の両方が理解を深められるからです。

  • 毎週1回、テーマを決めてグループ勉強会を開く。
  • 「今日理解できなかったこと」を共有し、互いに説明する。
  • 模擬試験前に“予想問題”を解きディスカッションする。

STEP 3 定期試験・実習を”理解深化のチャンス”に変える

1. 定期試験=総復習+理解チェックの機会

試験は「評価のための壁」ではなく、「知識の整理の機会」と捉えましょう。試験範囲をマップ化し、各単元の“つながり”を俯瞰して確認します。

おすすめ勉強法:

  • 試験2週間前から「理解していない部分だけ」を重点復習する。
  • 問題集を3周する代わりに、「1周目→理由説明」「2周目→関連図解」など段階的に理解を強化する。
  • 過去問を通して出題意図を分析する。

2. 実験・実習は”実践する学習”

1〜2年の実験や観察実習では、結果の成否よりも「なぜそうなったか」を考えることが重要です。

ノートに残すべき3項目:

  1. 仮説(何を予測したか)
  2. 結果(観察された現象)
  3. 考察(理論とどこが一致・不一致だったか)

このサイクルを回すことで、”知識を実践につなげる力”が身につきます。将来の臨床現場では、症状 → 原因 → 治療方針という同様の思考が求められるため、この訓練は極めて実践的です。

3. メンタル・時間管理も「学力の一部」

獣医学部は6年間にわたる長期学習です。早い段階で燃え尽きてしまう学生も少なくありません。

生活面のポイント:

  • 睡眠は最低6時間を確保する。
  • 毎日15分でも運動を取り入れる(散歩・ストレッチで十分)。
  • 1週間の学習時間を「固定時間+柔軟時間」で管理する。
  • 不安や疲労が続く場合は、大学のカウンセリングを活用する。

心身のバランス管理も、”国家試験を戦い抜く基礎力”です。

STEP 4 早期から国家試験・CBTを意識する

1〜2年次の段階で国家試験やCBTの形式を軽く把握しておくことが、後の負担を大幅に減らします。

1. 国家試験の出題構成を知る

  • 一般問題(基礎・応用)
  • 臨床問題(思考力・判断力)
  • 必修問題(臨床対応力)

基礎科目で扱う内容の多くが、国家試験の「一般問題」として登場します。早い段階で「出題範囲の基礎部分」だけでも目を通しておくと、学習の方向性が定まります。

2. CBT・OSCEの存在を理解しておく

3〜4年次に実施されるCBT(Computer Based Testing)とOSCE(客観的臨床能力試験)は、学年進級や臨床実習の許可に直結する重要試験です。

  • CBTでは、1〜2年で学ぶ基礎科目の統合的な理解が問われる。
  • OSCEでは、実技+コミュニケーション能力が評価される。

したがって、基礎期から“理解を言語化する力”や”図で説明する力”を磨いておくことが、大きな武器になります。

STEP 5 1〜2年次に身につけておくべき習慣とマインドセット

  • 「今日は何を理解したか」を毎日復習し簡単にまとめる。
  • 「なぜこの授業が必要なのか」を講義毎に考える。
  • 苦手科目は“早めに解決”する。
  • 学習の目的を”資格取得”ではな“動物医療への貢献”と捉える。

この4つを習慣化するだけで、学びの質は大きく変わります。

まとめ:基礎期の努力は、6年後の自信に変わる

獣医学部1〜2年の学びは、派手さこそありませんが、ここで積み上げた理解の深さが、後の臨床推論力、国家試験合格率、そして診療現場での即戦力を決定づけます。

“覚える”ではなく”使う”学びへ。

基礎期にこそ、思考力、探究心、継続力を磨くチャンスがあります。将来、動物と向き合うとき、あなたが語れる「根拠」はこの時期の学びから生まれるのです。

 
監修者プロフィール

Meg講師:平松 育子 先生

平松育子先生は、山口大学農学部獣医学科(現 連合獣医学部)を卒業された獣医師です。

卒業後は山口県内の複数の動物病院で代診として経験を積まれました。その後、山口市でご自身の動物病院を開業され、現在は大手動物クリニックの院長を務めていらっしゃいます。

授業においては、その豊富な臨床経験に基づいた、わかりやすく丁寧な解説が受講生から好評を得ています。