医学部入学前・基礎の学び直し

医学部入学前・基礎の学び直し(リメディアル)|高校生物・化学・物理・数学を医学の基礎につなげる方法

この記事の結論
  • リメディアルの目的は、高校の生物・化学・物理・数学を医学の講義で使う形に結び直すことです。
  • 全範囲をやり直すのではなく、生理学・生化学・薬理学・統計学で使う単元に絞って学び直します。
  • 2年次の基礎医学が始まる前に、未履修科目の基本を終えておくのが目安です(時期は大学により異なります)。

結論|リメディアルで大切なこと

医学部の講義は、高校理科の知識を「知っている前提」で進みます。たとえば生理学の循環では流体の物理、腎臓では浸透圧と酸塩基平衡の化学、薬理学では指数関数と対数、疫学では割合と確率が当たり前のように使われます。入試で選択しなかった科目や、苦手なまま入学した科目があると、講義のたびに小さな穴が積み重なります。

リメディアルでは、教材を増やす前に「どの単元が、どの医学科目で使われるか」を把握し、穴を優先度順に埋めることが重要です。

図1 6年間の中でのリメディアルの位置づけ(一般的な流れ)
1年
教養・基礎科学
早期体験実習

→

2年
解剖・生理・
生化学

→

3年
病理・薬理・
微生物・社会医学

→

4年
臨床医学講義
共用試験CBT・OSCE

→

5年
診療参加型
臨床実習

→

6年
臨床実習・
卒業試験・国試

リメディアルは1年次(入学前を含む)が中心ですが、2年次以降も基礎医学の前提として効いてきます。

※科目配当は大学により異なります。一般的な例として作成。

高校科目と医学の基礎のつながり

学び直す範囲は「医学で使うところ」に絞るのが効率的です。図2は、高校の主な単元と、それを前提にする医学部の科目を対応させたものです。

図2 高校科目 → 医学の基礎 対応マップ
高校の科目 特に使う単元 つながる医学部の科目・テーマ
生物 細胞・遺伝子とその働き・代謝・恒常性・免疫 細胞生物学、生化学、生理学、遺伝学、免疫学
化学 物質量(mol)・濃度、酸と塩基・pH、緩衝液、浸透圧、反応速度、有機化合物 生化学、生理学(体液・酸塩基平衡)、薬理学
物理 力学(圧力)、流体、電気回路(オームの法則)、波・音、原子と放射線 循環・呼吸の生理学、神経の電気生理、画像診断・放射線医学
数学 指数・対数、割合、確率・統計の基礎、グラフの読み取り 薬物動態、酸塩基平衡の計算、疫学・医療統計、臨床推論

※対応は代表例です。所属大学のシラバスで、各科目の前提知識を確認してください。

特に、物理・生物のどちらかを入試で選択していない人は、図2の該当行を最優先にしてください。高校の教科書レベルで用語と基本法則を確認し、次に大学の講義資料で医学の文脈に結び付ける、という2段階で進めると止まりにくくなります。

つまずきやすい理由と診断

入学直後のつまずきは、講義の速度が速い、前提知識があいまい、復習が後回しになる、試験形式を知らない、といった要因が重なって起こります。苦手を「なんとなく苦手」のままにせず、原因を3つに分けると対策がはっきりします。

図3 つまずきの原因診断と対策
診断 よくあるサイン 対策
理解不足 用語は覚えたが、なぜそうなるか説明できない 高校の教科書に戻り、定義→仕組み→具体例の順に自分の言葉で説明する
記憶不足 説明はできるが、試験で数値・名称が出てこない 1日後・1週間後に小テスト形式で思い出す練習(想起練習)をする
演習不足 解説を読めば分かるが、初見の問題が解けない 単元ごとの小問を解き、誤答の理由を1行で記録する

※1つの単元に複数の原因が重なることもあります。最も当てはまるものから対処します。

学習の進め方(5ステップ)

  1. 現状把握:シラバスと講義資料から、前提として使われている高校の単元を書き出す
  2. 優先順位:未履修科目 → 直近の講義で使う単元 → 苦手単元の順に並べる
  3. 理解:高校の教科書・参考書で定義と基本法則を確認し、医学の例(血液のpH、血流など)に当てはめる
  4. 演習:小問で確認し、誤答の理由を「理解・記憶・演習」のどれかに分類して記録する
  5. 再評価:1週間後に同じ論点を何も見ずに説明・解答できるかを確認する

4週間の学び直し計画例

入学前や1年前期に、未履修科目を中心に学び直す場合の一例です。1日の学習時間や順番は、所属大学の講義進度に合わせて調整してください。

図4 4週間のリメディアル計画例(未履修:物理の場合)

第1週
物理の基礎:圧力・流体・オームの法則。循環の「血流=圧較差÷抵抗」に当てはめて説明できるようにする

第2週
化学:mol・濃度、酸と塩基・pH・緩衝液、浸透圧。血液のpH・輸液の等張性に結び付ける

第3週
生物:細胞・遺伝子発現・代謝・恒常性。生化学と生理学の講義資料の目次と照合する

第4週
数学:指数・対数・割合・確率。半減期・pH・感度/特異度の計算で総復習し、苦手単元を再評価

※説明用の計画例であり、標準プランではありません。

学習法の比較

方法 強み 注意点
高校の教科書・参考書 前提知識の穴を最短で埋められる 医学の文脈に結び付けないと講義で使えない
大学の講義資料・シラバス 大学の到達目標と試験範囲に沿う 前提が抜けていると読んでも理解が進まない
問題演習 理解の穴が見える 正誤だけでなく根拠まで確認する
個別指導 どこまで戻ればよいかを一緒に判断できる 自習と組み合わせて定着させる

CES医科のマンツーマン指導

CES医科では、講師1人・生徒1人のマンツーマン指導で、医学部の進級・CBT・OSCE・卒業試験・医師国家試験まで、学習段階に応じた個別指導を行っています。リメディアルでは、入試での選択科目と大学のシラバスを照らし合わせ、「どの単元まで戻るか」を最初に決めてから学習計画を作ります。

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よくある質問

Q. 医学部のリメディアル教育とは何ですか?

A. 大学の講義を理解するために不足している高校レベルの基礎学力(生物・化学・物理・数学)を補う学習です。入試で選択しなかった科目や、苦手なまま入学した科目が主な対象になります。

Q. 高校で物理(または生物)を選択していなくても医学部の授業についていけますか?

A. ついていけます。ただし生理学・生化学・放射線医学などで前提として使われるため、入学前後の早い時期に、医学で使う単元に絞って学び直すのが効率的です。

Q. 学び直しはいつ始めるべきですか?

A. 合格後から入学前の時期、または1年前期の早い段階が理想です。2年次の解剖・生理・生化学が始まる前に、未履修科目の基本を一通り終えておくと負担が大きく下がります。

Q. 高校の教科書と大学の教科書、どちらを使えばよいですか?

A. まずは高校の教科書や参考書で用語と基本法則を確認し、次に大学の講義資料で医学の文脈に結び付けます。最初から専門書を読むと前提知識の穴で止まりやすくなります。

Q. 大学によってリメディアルの内容は違いますか?

A. 違います。補習講義の有無や対象科目、単位の扱いは大学ごとに異なるため、所属大学のシラバスと学生便覧を確認してください。

確認テスト(10問・解説付き)

高校理科・数学が医学の基礎にどうつながるかを確認する問題です。答えを見る前に、理由まで説明できるか試してください。

Q1. 血液のpHを一定に保つ主な緩衝系はどれか。

解答:重炭酸緩衝系(HCO₃⁻/H₂CO₃)

解説:高校化学の「緩衝液」がそのまま生理学・腎臓学の酸塩基平衡につながります。CO₂は肺で、HCO₃⁻は腎臓で調節されます。

Q2. pHが7から6に下がると、水素イオン濃度は何倍になるか。

解答:10倍

解説:pHは水素イオン濃度の常用対数にマイナスを付けた値です。対数の理解は酸塩基平衡や薬物動態の計算の前提になります。

Q3. 緩衝液のpHを表すヘンダーソン・ハッセルバルヒの式は?

解答:pH = pKa + log([A⁻]/[HA])

解説:血液ガスの解釈ではpKa=6.1の重炭酸系で用います。式の意味を言葉で説明できるようにしておきましょう。

Q4. 生理食塩水(0.9% NaCl)は血漿に対して高張・等張・低張のどれか。

解答:等張

解説:浸透圧は輸液・浮腫・腎臓の理解に直結します。等張液を投与しても細胞内外の水の移動はほぼ起こりません。

Q5. 血管の半径が半分になると、血流抵抗はおよそ何倍になるか(ポアズイユの法則)。

解答:約16倍

解説:抵抗は半径の4乗に反比例します。動脈硬化や細動脈による血圧調節を理解する物理の基礎です。

Q6. 「血流量=圧較差÷抵抗」は物理のどの法則に対応するか。

解答:オームの法則(電流=電圧÷抵抗)

解説:電気回路のたとえで循環生理を考えると、直列・並列の血管抵抗も整理しやすくなります。

Q7. 真核細胞で転写(DNA→mRNA)が行われる主な場所は?

解答:核

解説:翻訳はリボソームで行われます。セントラルドグマは生化学・遺伝学・分子標的薬の理解の出発点です。

Q8. ミカエリス・メンテン式のKmとは何を表すか。

解答:反応速度が最大速度(Vmax)の半分になるときの基質濃度

解説:Kmが小さいほど基質との親和性が高いと考えます。薬理学の阻害様式(競合・非競合)の理解にも使います。

Q9. 半減期4時間の薬物は、12時間後に血中濃度が初期値の何分の1になるか(1次消失と仮定)。

解答:8分の1

解説:12時間は半減期3回分なので(1/2)³=1/8です。指数関数は薬物動態の基本です。

Q10. 検査の感度を表す式はどれか。

解答:真陽性 ÷(真陽性+偽陰性)

解説:感度は「病気の人を陽性と判定できる割合」です。数学の割合・条件付き確率が疫学・臨床推論につながります。

参考情報

※本記事は一般的な学習情報です。科目配当・試験時期・進級基準は大学ごとに異なるため、所属大学のシラバス・学生便覧・試験要項を優先してください。試験制度の数値は記事末尾の公式情報で最新版をご確認ください。

執筆・編集:CES医科 講師チーム

監修:岩崎 陽一(株式会社アクト 代表取締役)。医学部・医療系国家試験の指導に30年以上携わる。

最終更新日:2026年10月30日